イベント詳細
ジャワ地震からの復興と歴史都市遺産 −インドネシア・ジョグジャカルタ
開催日:2008年12月2日
場所:京都大学桂キャンパス Cクラスター C2 講義室(102)
主催:
京都大学GCOEプログラム都市ガバナンス領域研究会
Program
Report 013
概要
Jogja Heritage Society (JHS)は、古都ジョグジャカルタ市とその周辺地域の文化遺産や歴史的町並みの保全まちづくりに尽力してきた民間非営利組織で、ガジャマダ大学(Universitas GadjahMada=UGM)等の諸大学の教員や卒業生や在校生が多く参画し活動している。
2006年5月のジャワ地震以前より、ジョグジャカルタ市中心部の王宮とその周辺地区や、市の東南に位置する歴史的市街地KotaGede地区などのまちづくりに貢献してきた。ジャワ地震直後には、UGMや他の諸団体とともに、いち早く被災地域の支援活動に従事し、現在まで様々な復興活動をマネジメントしている。とりわけ、バティック(ジャワ更紗)や銀細工、木工細工などの、古都の伝統産業を支える職人層てでもある被災地住民の生活再建支援のため、コミュニティ・ベースでの産業復興および振興を促し支援する活動を継続している。
京都府ージョグジャカルタ特別州の友好自治体関係のもとに行われている復興支援研修のプログラムに参加するために来日されたJHSのティティ先生を京都大学にお招きし、ジャワ地震からのジョグジャカルタの歴史都市遺産の復興状況についての基調報告を伺うとともに、今後の研究交流のためのディスカッションを行う。
報告
研究会には、京都大学の教員・学生、京都府、京都府のインドネシア研修生等、約20名が参加した。
基調報告では、JHS(Jogja Heritage Society)のティティ先生よりコタゲデとイモギリという2つの地域におけるジャワ地震での被災からの復興の現状についての報告がおこなわれた。報告内容は、震災復興のみでなく、伝統的まちなみ景観の再生保全、現地で生活する人々の暮らしや伝統的な産業を守るためのJHSの取り組みが報告された。
世界的危機遺産リストにも登録されているコタゲデの事例では、JHSがユネスコジャカルタとともに1年間かけて作成した、建物のオーナーがいかにして古い建物を修復すればよいかのマニュアル本の紹介がなされた。
震災の被害が最も大きかった地域の1つであるイモギリの事例では、伝統的産業であるバティックの復興支援に関する報告がなされた。その一方で、産業発展による一般住宅の増改築による非伝統的建築物の問題が指摘された。
基調報告を受けた、会場を交えてのディスカッションでは、作成されたマニュアル本に関心が集まり、伝統的建築物の保全やレンガ壁の耐震補強の方法など詳細な内容に関する質疑が行われた。京都のコミュニティシステムを例にあげ、インドネシアにおける地域の意思決定がどのような単位で行われているかという質問に対しては、インドネシアにもRT(隣組に相当)とRW(町内会に相当)というシステムが紹介され、講演者からは逆に京都のコミュニティシステムに関する質問がなされる場面もあった。
最後に、今後の研究協力の中で、日本から参画して活動を行うならどのようなことを考えていく必要があるかに関して、インドネシアは民族も異なり、様々な地域があるということを踏まえ、マスタープランをつくるのではなく、one by one の対応を行い、それらがうまく一体化するようにローカルに考えていくことが重要であるということが指摘され、今後の協力体制の確認が行われた。