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イベント詳細


気候変動下のアジア諸国における豪雨に起因する斜面崩壊に関する研究集会

開催日:2011年3月7日(13時 - 17時)
場所:西日本高速道路株式会社本社会議室(〒530-0003 大阪市北区堂島1丁目6番20号)

主催:
- 京都大学大学院工学研究科都市社会工学専攻
- 京都大学大学院工学研究科社会基盤工学専攻
共催:
- 西日本高速道路株式会社
- 京都大学GCOEプログラム「アジア・メガシティの人間安全保障工学拠点」

出席者数:約60名

Program (Japanese & English)
Rport 143

概要

昨今、日本を始めとするアジア諸国においては、気候変動の一現象とみなされる集中豪雨に起因する斜面災害が頻発している。このような状況を踏まえ、京都大学大学院工学研究科は、2007年9月よりタイ・カセサート大学およびタイ・アジア工科大学との共同研究プロジェクトとして、タイ・ナコンナヨックにおきまして熱帯性豪雨(スコール)時の斜面の雨水浸透に関する原位置計測を実施してきた。また、2010年2月よりは、西日本高速道路株式会社との共同研究「集中豪雨に起因した斜面表層領域における流出浸透特性に関する研究」として、道路防災の観点からの集中豪雨に対する土砂災害早期警戒体制の立案を目的とした原位置計測結果分析に基づく研究を実施してきた。
本研究集会は、これまでのタイにおける原位置計測に関する研究成果に加えて、タイからの招待講演者によるアジア諸国における豪雨に起因する斜面災害の報告を目的として企画したものである。具体的には、同集会においては、共同研究成果の報告に加え、本研究のカウンターパートであるカセサート大学、アジア工科大学およびタイ運輸省道路局DOH(Department of Highways, Thailand)の研究開発部門関係者を講演者として招き、アジア諸国における集中豪雨に起因する斜面災害に関連する内容について報告しするとともに参加者との議論を実施した。

報告

本研究集会では、Montri Dechasakulsom (タイ道路省)、Noppadol Phien-wej (アジア工科大学)、Suttisak Soralump (カセサート大学)、Apiniti Jotisankasa (カセサート大学)および筆者から、それぞれ「タイにおける道路防災」、「2010年アジア諸国における洪水・斜面崩壊事例」、「タイにおける土砂災害早期警戒体制の適用状況」、「タイの斜面における間隙水圧計測」および「タイ・ナコンナヨックにおける原位置モニタリング」に関する講演がなされた。いずれの課題も、当GCOE分野での一テーマである、東南アジア地域における人間安全保障工学の観点からの地盤・地盤構造物を対象としたアセットマネジメントに関する話題であった。
この発表内容は、以下のように要約される。すなわち、斜面崩壊事例については、近年タイにおいては斜面崩壊が急増中であるが、その理由としては以下の2つの要因によるものとの分析結果が示された。まず、小規模崩壊は土地利用の乱開発、すなわち人為的災害に起因すると解釈されるのに対して、大規模崩壊は気候変動に起因する。いずれのタイプの斜面災害に対しても、行政としての何らかの対応が必要であると報告された。具体的には、土地利用の乱開発には土地利用の法的規制の必要性があり、また大規模崩壊については、住民避難を目的と土砂災害早期警戒体制の立案が斜面災害リスク低減の観点から最も有効な方策の一つであるとの見解が示された。 昨今、日本においてもゲリラ豪雨に代表される異常気象の発生に対する斜面防災の必要性が高まる中、本研究集会では、講演に関して参加者が高い関心を示すとともに、講演者との闊達な質疑応答がなされた。
本研究集会で議論された課題は、持続可能な発展性についてのみならず、その地域の住民の安全について複合的な観点からの検討を要するものであり、当GCOEのテーマである「アジア・メガシティにおける人間安全保障工学」に即したものであると確信した。 このような観点から、今後とも当研究集会のような機会をとらえて、当該分野に関する知見を収集するとともに、多くのアジア地域の研究者および実務者との意見交換を継続していく所存である。