イベント詳細
第33回京都大学環境衛生工学研究会シンポジウム 企画セッション-東日本大震災-環境衛生工学が今できること
開催日:2011年7月29日
場所:京都大学桂キャンパスCクラスターC1-2棟3F グローバルホール人融
主催:
京都大学環境衛生工学研究会
共催:
- 京都大学グローバルCOEプログラム「アジア・メガシティの人間安全保障工学拠点」
- 科学技術戦略推進費「環境マネジメント人材育成国際拠点」
出席者数:約100名
Report 163
概要
2011年3月11日に発生した東日本大震災においては、すでに今後の復旧・復興に向けて、さまざま取り組みが進められているが、環境衛生工学が対象とする分野においても、上下水道や廃棄物、放射線など、早期回復が求められる重要な課題が多くある。
そこで、本シンポジウムにおける企画セッションとして、実際に被災地にて活動された各分野の諸先生を中心に、その現状と、課題や対策について報告いただき、聴講者の方々とともに議論を行った。
また、ポスターセッションにおいてポスター発表を行い、アジア諸国における健康リスク問題に対する問題解決指向型の最新かつ実践的な環境工学、技術に関する情報交換を行った。
報告
企画セッションでは、まず、平山修久特任准教授(京都大学)より、上水道における被災状況、対策、および今後の課題について報告があった。報告では、本震災では、初動時における上水道の被害把握を探知、確認することが困難な状況であり、今後の災害対応においては、災害初動時、あるいは事前の上水道システムの被害予測がより重要であることが強調された。
次に、岡本誠一郎氏((独)土木研究所)より、下水道施設災害に伴う公衆衛生面の影響と対応方策について報告がなされた。本震災では各100以上の下水処理場およびポンプ場に加え、広範囲の管きょが被災したこと、大規模震災時においては、まずは汚水排除が重要であり、他のインフラ(上水、ガス)の復旧にも注意が必要であることが述べられた。
そして、滝上英孝氏((独)国立環境研究所)より、災害廃棄物対策の現状と今後の取り組みについて報告がなされ、本震災で生じた廃棄物の質的、および量的特徴、災害廃棄物(特に海水被り木材や放射性物質を含む廃棄物)の処理対策の現状と今後、廃棄物資源循環学会における災害廃棄物への取り組みといった話題が述べられた。
最後に、高橋知之准教授(京都大学)より、福島第一原発事故による環境中の放射性物質と被ばく線量について報告がなされ、原子力災害時の主な被爆経路、放射線防護の基準の考え方、放射線放出や汚染の現状、および種々の規制値について述べられた。
ディスカッションにおいては、特に放射性物質を含む廃棄物について議論がなされ、対策には、国における省庁間の連携が重要であることが認識された。
ポスターセッションにおいては、人間安全保障工学分野・教育プログラムに所属する博士学生による13件の発表があり、現場主義に基づく問題解決型の実践的な環境工学技術に関する活発な議論が行われた。
写真:シンポジウムディスカッションの様子