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イベント詳細


第1回 石油工学におけるナノジオサイエンスの適用に関するシンポジウム

開催日:2011年12月13日 - 14日
場所:キャンパスプラザ京都

主催:
- バンドン工科大学
- 京都大学
- 京都大学グローバルCOEプログラムアジア・メガシティの人間安全保障工学拠点

共催:
- JAPEX(石油資源開発)
- JOGMEC(独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構)
- RITE(公益財団法人 地球環境産業技術研究機構)
- VPI(ベトナム石油研究所)

参加者数:約63名
発表者数:約32名

Report 187

概要

第1回シンポジウムの目的は、人間社会に欠くことのできない、持続可能なエネルギー供給のための石油増進回収(EOR)や二酸化炭素地下貯留(CCS)のような、石油工学へのナノジオサイエンスの適用に関する最新の研究成果について共有し、議論するためである。ナノジオサイエンスや分子のスケールとマルチスケールのシミュレーションの直接比較に興味を持つ多くの研究者が本シンポジウムに参加した。さらに、シンポジウムでは数名のシンポジウムのプレゼンターが主な執筆者となって、教科書を作成することを計画している。
シンポジウム終了後は“石油ガス産業における分子レベルシミュレーションの適用”と題したワンデースクールが開催された。これは人間のエネルギーセキュリティのために次世代の技術者を育てること、また、安定的かつ長期的なエネルギー供給の保障に貢献する彼らの発展を推し進めることを目的としている。

報告

“石油工学におけるナノジオサイエンスの適用”と題したシンポジウムは2011年12月13~14日にキャンパスプラザ京都において開催された。このシンポジウムは京都大学、バンドン工科大学、京都大学グローバルCOEプログラムアジア・メガシティの人間安全保障工学拠点が主催した。主催組織の代表は京都大学のYunfeng Liang博士である。約63名のシンポジウム参加者は世界中(オーストラリア、ブラジル、中国、カリフォルニア、ロンドン、カナダ、日本、インドネシア、ベトナム)のさまざまな大学や企業から集まった研究者(教授、ポスドク、学生を含む)や技術者である。このシンポジウムでは下記の2つの活動が行われた。(1)国際シンポジウム“石油工学におけるナノジオサイエンスの適用”(2011/12/13-14) (2)ワンデースクール“石油ガス産業における分子シミュレーションの適用” (2011/12/15)
シンポジウムは松岡俊文教授の挨拶で開始した。教授は全ての参加者を歓迎し、私たちの未来にとって石油工学におけるナノジオサイエンスの適用の重要さを強調した。
オープニングセッション終了後、発表セッションが開始された。それぞれの発表の最後に質疑応答がなされた。発表は7つのトピックに分類され、32人が発表した。(1) 多孔質体における多孔質構造及び混相流の特性 (2)石油工学におけるナノジオサイエンス (3)EOR技術とその基礎 (4)地下深部における気体炭素化合物 (5)二酸化炭素の地下貯留 (6)油-水-鉱物の相互作用(分子の特定) (7)破砕体における流動とシェールガス探査 それぞれのトピックにおいて、大学や石油業界から1~2人の招待講演者が特別講演を行った。特別講演は下記の10名である。
1. Amos Nur教授は“頁岩層に焦点を当てた貯留層の特性、シミュレーション及びモニタリングにおけるDigital Rock Physics(DRP)”について発表した。貯留層の特性を視覚的かつ定量的により深く理解するために、DPRが重要であることを説明した。 2. 伊藤正栄氏は“日本の革新的技術を用いた高温高圧シールへのCNTナノ複合材料を用いた新解法”について発表した。石油増進回収を飛躍的に上昇させる、CNTゴムを基にした新高温高圧材料について述べた。従って、ナノテクノロジーは今まさに石油分野に適用しようとしている。
3. Mingyuan Li博士はEORのための新しい徹底的プロファイル制御作用の特性”について発表した。水ミチの形成や低い掃攻率、低い石油回収率などの、水攻法後の問題について言及した。また、“徹底的プロファイル制御技術”の存在と、水ミチを制御し石油増進回収を助ける有効な徹底的なプロファイル制御作用に関するSMP(サルホメチル化フェノール性樹脂)の寄与について説明した。
4. Alistair Fletcher博士は“濡れ特性の連続的な流動ループ吸着装置”について発表した。濡れ性伸張パラメーターは多孔質体の特徴付けにおいて鍵となる概念であり、EORや他のナノジオサイエンスの過程にとって重要である。
5. Bo Peng博士は“原油残余からのスルホン化界面活性剤とそのEORへの適用” について発表した。原油の残留の分離や、スルホン化界面活性剤の合成、スルホン化界面活性剤の分子パラメータ、界面張力とEORの関係について述べた。
6. Caetano R. Miranda博士は“EORにおけるシリカナノ粒子の機能化” について発表した。石油開発におけるナノジオサイエンスの3つの重要な点を述べた。すなわち、貯留層状における無機ナノ粒子(SiO2)の安定性;塩分、温度、圧力、官能基の効果;ナノスケールのYoung – Laplaceの有効性である。
7. Leonardo Spanu氏は“地下深部の圧力・温度条件における気体炭素化合物” について発表した。圧力2-3GPa、温度4,000K以上の範囲におけるメタンの安定性やその状態図について述べた。
8. Ian C. Bourg氏は“二酸化炭素貯留層を封じるキャップロックのナノポアのプロセス” について発表した。geological carbon sequestration (GCS)の理解と、GCSにおけるナノスケールの位置づけについて述べた。
9. 垣内隆教授は“油-水境界面における電気化学的不安定性” について発表した。油-水境界面における電気化学的不安定性とその現象について紹介した。
10. Keng C. Chou博士は“鉱物表面における分子の相互作用:オイルサンド表面化学の非線形光学研究”について発表した。大量のエネルギー需要、多量の温水の使用、尾鉱沈殿池の処理、水性でない抽出プロセスの追求ような、現在の問題について説明した。これらの問題に関して、表面種を同定し、分子配向を測り、吸湿等温線を得るために、液体/個体界面でのSFGを用いた方法論を確立した。
 シンポジウムは松岡俊文教授の挨拶によって締められた。全ての発表者の包括的な考えが非常に興味深かったと述べ、総じて、石油増進回収(EOR)や二酸化炭素地下貯留(CCS)に関連するナノジオサイエンスの石油工学への貢献を強調した。最後に、次回のシンポジウム開催について言及し、参加を呼び掛けた。
第1回シンポジウムは成功に終わり、その後ワンデースクールが開催された。講師は京都大学(Yunfeng Liang博士、國枝真氏)、Lawrence Berkeley National Lab-USA (Mr. Ian C. Bourg), そして Universidade Federal do ABC Brazil (Prof. Caetano R. Miranda)である。