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イベント詳細


第二回石油工学におけるナノジオサイエンスの適用に関するシンポジウム

開催日:2012年11月26日 - 11月27日
場所:京大会館

主催:
- 京都大学
- バンドン工科大学
- 京都大学グローバルCOE プログラムアジア・メガシティの人間安全保障工学拠点

共催:
- JAPEX(石油資源開発)
- JOGMEC(独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構)
- Schlumberger、VPI(ベトナム石油研究所)

出席者数:約52名

Report 234

概要

第二回となる本シンポジウムの目的は石油の増進回収(EOR)、シェールガス開発、二酸化炭素地中貯留(CCS)などの人類の持続可能なエネルギー供給に不可欠な石油工学技術に対する「ナノジオサイエンス」の適応について、最新の研究成果を共有、議論することにある。本シンポジウムには「ナノジオサイエンス」また分子・マルチスケールシミュレーションに関心のある多くの研究者・技術者が参加した。

報告

第二回「石油工学におけるナノジオサイエンスの適用に関するシンポジウム」は2012 年11 月26、27 日芝蘭会館にて、松岡俊文教授(京都大学)を代表者、梁云峰助教(京都大学)を進行役とし、京都大学、バンドン工科大学、京都大学グローバルCOE プログラム「アジア・メガシティの人間安全保障工学拠点」によって主催された。52 名に及ぶ参加者は様々な部局、様々な国々(オーストラリア、ブラジル、デンマーク、中国、カリフォルニア、イタリア、ロンドン、カナダ、日本、インドネシア、ベトナム)の教授、ポスドク研究員、学生を含む研究者とエンジニアで構成された。
シンポジウムのオープニングでは、松岡俊文教授が参加者を歓迎するとともに未来の石油工学におけるナノジオサイエンスの重要性を強調した。
オープニングの後、発表セッションが開始された。発表セッションでは発表後に質疑応答の時間が設けられた。合計26 人の発表者が6 つのトピックに別れて発表を行った。6 つのトピックはそれぞれ: (1)多孔質体における多孔質構造及び混相流の特性 (2)EOR 技術とその基礎 (3)ナノジオサイエンスとナノテクノロジーに関する特別講演 (4)フラクチャ内流体流とシェールガス開発(5)二酸化炭素地中貯留 (7)油‐水‐鉱物間相互作用である。それぞれのトピックについて大学や石油業界から1~2 人の招待後援者が特別講演を行った。特別講演は以下の6 名である。
1. Sergio D. Kapusta 博士は 「石油・ガス探査、開発に対するナノテクノロジーの適応」について発表した。博士は石油業界の挑戦を「エネルギー量を二倍にし、二酸化炭素の排出と水の消費を半分に」という一言でまとめた。彼はどのようにして利用可能なナノテクノロジーを用いて未来の新しいエネルギーへの挑戦にこたえていくかについて説明し、そしてそれはエネルギー業界にとって難問であると同時にすばらしい機会であると述べた。
2. Edo S. Boek 博士は「マルチスケール流体実験、イメージングとシミュレーション」というタイトルで発表を行った。彼はCO2 のインビビションのポアスケールモデルやエッチングされたマイクロモデル内のアナログ流体実験そして格子ボルツマン法の説明を行った。自発的なインビビションを行うマイクロ流体実験について、博士とそのグループは最も狭い流路がYoung-Laplace 則に従わずに満たされる現象を観察した。この発見はCO2 の圧入後の塩水の自発的インビビションによって決定されるコアスケールにおけるCO2 の残存飽和度を計算する際に重要な結果をもたらす。さらに、Edo は室内のNMR 設備からどのようにして油分子の洞察を行うかについて発表した。
3. Susan L. Stipp 教授は 「表面濡れコントロールに関するナノスケール観察」について発表した。表面の構成成分を調べるための表面分光(主にX 線光電子分光計)、表面観察のための走査型プローブ顕微鏡(主にAFM)また結合関係を考察するための計算化学(DFT、MD)を用いることで、教授とそのグループ(NanoGeoScience グループ)は典型的な貯留岩の濡れ性は接触している流体の構成によって、ナノメータースケールで不均質であることや、粘着力や表面の構成が多様であることを示した。コペンハーゲンのNanoGeoScience グループは低濃度塩水が石油の回収を増進させるメカニズムを理解するためのヒントを得ることができた。
4. Masaei Ito 博士は「新しいナノCNT ポリマーのHPHTシール油田への適応」について発表を行った。未開発の高温大深度貯留層の開発に関して、高温高圧条件(HPHT)への対策が鍵となる。Masaei は新しいカーボンナノチューブとラバーのナノ合成物を基本とするシール物質を発表した。そしてその物質はシュルンベルジェと信州大学によってHPHT における石油、ガス炭鉱、生産につかうため開発が成功し、急速に普及した。
5. Amos Nur 教授は「シェール開発のためのデジタル岩石物理学」について発表を行った。彼はデジタル岩石物理学の頁岩特性評価への応用について説明し、ここ十年で急速に発展している3 つのテクノロジーを示した。1 つ目は岩石サンプルの内部構造(~10nm)を詳細に明らかにするための高解像度イメージング技術である。2 つ目は複雑な物理現象を再現するための新しい数値計算法、3 つ目はゲームやアニメーション技術から発展した高機能GPU を用いた高速並列計算である。
6. Caetano R. Miranda 教授は「第一原理計算による炭化水素、ナノ粒子の鉱物表面吸着特性評価」について発表した。教授は現在では研究されたすべての構造のNMR スペクトルのピークを評価できると述べた。彼はカルサイト、石英表面上の様々な場所に存在する原子に対して化学シフトの違いを観察することに成功した。加えて、理想的な表面に関しては、炭化水素の存在は吸着点におけるCa・Si 原子の化学シフトを修正する結 果が得られた。これはその他の方法で見ることができない鉱物表面に吸着した炭化水素を特定する方法に貢献するかもしれない。

シンポジウムが成功のうちに終了して、プレゼンターによる興味深い発表の数々に対する松岡俊文教授の感謝の言葉によってシンポジウムは閉幕した。教授はまた、石油の増進回収(EOR)、シェールガス開発、二酸化炭素地中貯留(CCS)に関係の深い石油工学におけるナノジオサイエンスの貢献度は高いと結論付けた。最後に松岡教授は第三回のシンポジウムの開催を案内した。聴衆は暖かく次回の参加と支援を歓迎した。