イベント詳細
京都大学グローバルCOE HSEシンポジウム2012
開催日:2012年12月2日
場所:京都大学桂キャンパス グローバルホール人融
主催:
京都大学グローバルCOEプログラム「アジア・メガシティの人間安全保障工学拠点」
共催:
- 工学研究科(社会基盤工学専攻,都市社会工学専攻,都市環境工学専攻,建築学専攻)
- 地球環境学堂
- 防災研究所
出席者数:約140名
Report 235
概要
本年度で最終年度を迎えます京都大学グローバルCOE「アジア・メガシティの人間安全保障工学拠点」では、これまでの5年間の研究・教育活動を振り返ると同時に、日本、中国、ベトナム、シンガポール、インドネシア、タイ、インド、マレーシアの関連する人間安全保障工学のメンバーと共に、今後の協働の方向性を共有することを目的として、総括シンポジウム”Kyoto University Global COE HSE Symposium 2012を開催しました。
報告
2012年12月2日、京都大学、アジアの関連大学、人間安全保障工学教育プログラムの卒業生・学生を迎えて総括シンポジウムを開催しました。
午前中のセッションでは吉田GCOE-HSE特定助教が司会を務め、GCOE-HSEプログラムリーダー、GCOE-HSE教育プログラムリーダー、4名の研究領域リーダーが研究発表を行いました。はじめに、本プログラムリーダーである松岡譲教授が開会の辞を述べ、「人間安全保障工学」について説明しました。さらに、これまで5年間の人間安全保障工学に関する研究・教育活動について紹介しました。続いて、「都市ガバナンス」研究領域リーダーの門内教授が、都市ガバナンスのコンセプト、プロセス、指標等について発表を行いました。次に、「都市基盤マネジメント」研究領域リーダーである大津教授が、これまで実施してきた主要なプロジェクトの概要と「地盤インフラアセットマネジメント」等の出版物について紹介しました。続いて、「健康リスクマネジメント」研究領域リーダーの田中教授が、過去5年間に実施してきた教育・研究活動について要約し、それら活動の拠点国や、「安全な水と衛生」、「水質の汚染と制御」などといった研究プロジェクトの分類を踏まえ、その概要を紹介しました。「災害リスクマネジメント」研究領域リーダーである多々納教授は、実施してきた11の研究プロジェクト名を紹介し、本領域の基本理念であった実践科学について説明しました。人間安全保障工学教育リーダーである米田教授は,その教育の理念、目的、カリキュラム構成等について説明し、「人間安全保障工学コース」の修了生が148名に及ぶ見込みであることを紹介しました。
続いて、人間安全保障工学教育プログラムの学生/卒業生4名が、在籍中の活動について発表しました。はじめに、博士後期課程2年のSukanya Misra氏が、ムンバイのケーススタディを踏まえ、人間安全保障の評価指標について発表を行いました。次に,同じく博士後期課程2年のTaweephon Suksawat氏が2011年にタイで発生した土砂災害に関する研究について発表しました。また、タイでの現地調査の様子について発表しました。続いて、本コースの卒業生である大阪薬科大学の東助教が、清華大学とこれまで協働して実施してきた活動について紹介し、人間安全保障工学教育プログラムへの謝意を述べました。最後に、現在防災研究所の研究員であるChoi Junho氏が、ムンバイ拠点をベースとした活動と彼の研究テーマであるリスクガバナンスの枠組みについて発表しました。
午後のセッションでは平山特定准教授が司会を務め、GCOE-HSEプログラムの海外拠点の代表者が発表を行いました。はじめに、清華大学の管教授がこれまでの清華大学と京都大学の連携の取り組みについて紹介し、双方向でのインターンシップを含む、教育/トレーニングプログラムについて紹介しました。続いて、GCOE-HSEプログラムのシンセン拠点リーダーの田中教授が、インターシップ活動、トレーニングコース、企業、公共セクター、学会等との連携活動について紹介しました。ハノイ拠点からは、ハノイ工科大学のハイ教授が、ハノイ理工科大学内の実験器具を備えた研究室/実験室を紹介し、続いてハノイ拠点リーダーである藤井教授が、地球環境学堂が主導し、GCOEと平行し実施していたEMLプログラムについて紹介し、ハノイ拠点のインターシップの受け入れ実績(19名、928日(人×滞在日数))等について報告しました。バンコク拠点からは、大津教授がアジア工科大学と連携して実施した共同研究の枠組みについて説明し、タイで発生した大洪水の現地調査やゲリラ豪雨に焦点を当てた原位置観測などを紹介しました。さらに、GCOE-HSEプログラムの後継プロジェクトとも位置づけられる、大学の世界展開力強化事業「強靭な国づくりを担う国際人育成のための中核拠点」について説明しました。続いて、アジア工科大学のPhien-wej准教授が、GCOE-HSEが主催・共催したシンポジウムやワークショップについて紹介し、2011バンコク大水害の経験を踏まえて、今後の連携の方向性を提示しました。次に、シンガポール拠点から、谷口教授が、シティロジスティクスや交通安全、災害時の回復力のあるロジスティクスシステムなど、国立シンガポール大学・海事研究センターと共同して実施している研究について簡単に紹介しました。続いて、同センター長であるBernard Tan教授がセンターの概要を説明し、CMSが採用している、キャパシティビルディングに根ざした学術研究と産業に根ざした共同研究からなる研究枠組みついて紹介しました。その後、バンドン海外拠点リーダーである松岡教授が、バンドン拠点の概要を紹介し、本拠点のカウンターパートであり、現インドネシア文部省高等教育局長であるDjoko Santoso教授を紹介しました。Santoso教授は、「5年間のGCOEプログラムでの活動とITBの目標に及ぼした影響」と題して発表を行いました。その中で、地盤沈下の同定、海水侵入、地下水位の低下、地球物理学的モニタリングと地熱、炭化水素研究への適用、インドネシアにおける炭素隔離等に関する研究を継続・発展させる見込みであることを発表した。また、これまで実施したシンポジウムやワークショップ、特別講義など13のイベントを実施し、さらに、”The Contribution of Geoscience to Human Security”という本を刊行したことを紹介しました。ムンバイ拠点プロジェクトのシニアアドバイザー兼コーディネーターであり、SPAのMisra名誉教授は,総合リスクマネジメントの実践科学に焦点をおいたムンバイ拠点の活動の包括的枠組みについて説明した。さらに、SPAの総長であるChetan Vaidya教授は、今後も本プロジェクトを継続実施していくことを述べました。最後に、クアラルンプール拠点から、マラヤ大学の代表者としてNik Merium教授が、これまでのマレーシアの研究・教育活動について報告した。特に、彼女は今年度から開始したGCOE-HSEプログラムの後継プログラムである「アジアコアプログラム-リスク評価に基づくアジア型統合的流域管理のための研究教育拠点」について紹介しました。
海外拠点代表者からの発表の後は、京都大学の3名から、アジアにおける今後の人間安全保障工学の展開について発表を行いました。はじめに米田教授が、人間安全保障工学教育プログラムを、事業終了後も継続実施することを報告し、地球環境学堂長である藤井教授が、これまで地球環境学堂が実施してきた連携プロジェクトや、ベトナムを拠点とした同窓組織について説明し、今後も連携を図っていくことを宣言しました。続いて、大津教授が、アジア諸国との連携の重要性について強調し、本グループの国際化の計画について説明しました。最後に松岡譲教授が海外招聘者に贈呈品を授与し、シンポジウム参加者に謝意を述べ、シンポジウムを閉会しました。
グローバルCOE-HSEプログラムの外部評価の実施
総括シンポジウム同日、グローバルCOE「アジア・メガシティ人間安全保障工学拠点」では、関西大学総長楠見晴重教授を外部評価委員会の議長として迎え、「組織」、「教育」、「研究」、「影響と将来計画」の観点から外部評価を実施しました。外部評価委員会は,GCOE-HSEに関連する大学教員9名から構成されました。「影響と将来計画」の評価が、継続的な予算目処に不確定があるため他項目と比較して若干低かったものの,概ね高い評価結果を得ました。外部評価の詳細な結果については、GCOE-HSEのホームページに掲載しています。
京都大学執行部への表敬訪問
総括シンポジウムに参加した招聘外国人研究者は、翌日、京都大学吉川理事、三嶋理事、森国際交流推進機構長、北野工学研究科長含む京大執行部への表敬訪問を行いました。その中で、執行部は、今後のアジア諸大学との連携の枠組みについて政府と検討中であること、さらに、ダブルデグリープログラムを含むアジア諸大学との協調的な教育制度について、ガイドラインを作成中であることを説明しました。執行部はアジアの諸大学からの招聘者を温かく歓迎し、その参加者は今後のアジアにおける教育制度の枠組みについて実りある議論を行うことが出来ました。
以上が2012年12月2、3日に実施されたグローバルCOE-HSEのイベントの報告になります.シンポジウムでは,海外招聘者やHSE教育プログラムの学生や卒業生、関連教員をあわせて、約150名が参加しました。
「人間安全保障工学」の確立、アジア諸国における人間安全保障ネットワークの確立に向けて、これまで5年間活動に取り組んできましたが、GCOE-HSEプロジェクトは今年度で終了します.これまでの活動を第一段階として捉え、今後も関連するアジア諸国の教員と連携を図りながら、人間安全保障工学の研究・教育を継続・発展していく予定です。