calender bar inside bar contact bar links bar link

イベント詳細


京都大学グローバルCOEセミナー「防消火技術者の職能と産業分野のリスクマネジメント」

開催日:2012年4月20日 16:00〜18:00
場所:京都大学桂キャンパスC2棟213ゼミ室

主催:
京都大学グローバルCOEプログラム「アジア・メガシティの人間安全保障工学拠点」

共催:
NPO法人 日本防火技術者協会

出席者数:19名

ポスター
Report 206

概要

本セミナーでは、火災防御システムの設計と産業分野におけるリスクマネジメントの分野において最先端の業務を行っている技術者を招き講演を行ない、職能防火技術者が火災安全とリスクマネジメントに果たす役割について討論を行う。また、グローバルスタンダードの趨勢と国内技術環境との差異を認識する機会としても企画した。

報告

講師の牧功三氏は火災防御システムの設計と産業界におけるリスクジメントを行う専門コンサルタン トである。主な業務の場は、米国ならびに関連する地域での各種施設にわたっており、業務の技術環境は基本的には米国をベースとしたグローバルスタンダードの中にある。PEFPE (職能防火技術者)の資格を持ち、NFPA (全米防火協会)の認定技術者でもある。
まず始めに、防火技術者の業務について簡単な紹介があった。日本と米国では、火災安全に対する認識の違いがあり、米国では基本的にはスプリンクラーで素早く火災を抑制することに主眼が置かれている。作動率や奏功率が高いためである。損害保険との結びつきも強いので、米国内の火災事故は保険会社に報告があり、事故統計が継続的に取られている。そのため、ある事故の教訓から、メーカーによる機器の改良や、使用者による管理方法の改善が行われやすい環境にある。その結果として、信頼度を継続的に向上させることができ、社会へも浸透していくことができている。
次に、防火技術者の役割について紹介があった。産業施設においては、火災防御はリスクマネージャーの管轄下に置かれており、防火技術者はリスクマネージャーの意を受けて業務を行う。そのため、火災リスクを十分小さくするためにコストを有効に使うという能動的な業務が求められている。これには保険業界も連動し、保険料割引などの制度が充実している。このこともあり、様々な施設の形態に見合 った消火システムが開発され、実用に供されている。
その一方で、日本の技術環境は閉鎖的である。米国をはじめとする先進国では、いわゆるグローバルスタンダードの技術が良く認知されており、実務に使われている。日本では政府による規制の影響が色濃くあり、技術市場は世界標準から切り離される傾向が強い。その結果、日本の技術は世界標準からは異なったものとなりがちである。
もう一つの論点は、リスクマネジメントに対する企業の姿勢である。欧米企業では、コストを有効に使ってリスクを下げることに積極的であるのに対して、国内企業ではマネジメントに消極的である。リスクを明示化し、これを抑制するシステムをどのよ うに作り上げていくかが今後の課題である。セミナーの最後には、世界標準との関係を踏まえて技術を向上させる方法論について意見交換を行った。


参加者集合写真